『すれ違う背中を』乃南アサ 感想
すれ違う背中を
著者:乃南アサ
『いつか陽のあたる場所で』に続く、マエ持ち女二人組シリーズの2作目です。
以下感想、ネタバレありです。
あらすじ
パン職人を目指して日々精進する綾香に対して、芭子はアルバイトにもなかなか採用されない。そんなある日、ビッグニュースが! 綾香が商店会の福引きで一等「大阪旅行」を当てたのだ。USJ、道頓堀、生の大阪弁、たこ焼き等々初めての土地で解放感に浸っていた彼女たちの前に、なんと綾香の過去を知る男が現れた……。健気な女二人のサスペンスフルな日常を描く人気シリーズ第二弾。
前作では日々の生活で精いっぱいな芭子でしたが、本作ではもっと中長期的な人生や生活、仕事などの夢や目標を考え始めました。
前科持ちなことを知られないよう、何かと慎重で消極的であったけど、
新しく始めたペットショップのバイトにおいて、刑務所で培った裁縫技術で作ったペット用の服が評判になって、
人に評価されたり感謝されたり、自分が求められることに喜びを感じ、これがこれからの仕事に出来るかもしれない、と少し希望を見出してきます。
また成り行きで飼い始めたインコの『ぽっち』や、ちょっと素敵な男性との出会いや新しい女友達など、生活の中にも張り合いや賑やかさ、鮮やかさが増してきました。
ドラマでも芭子には恋愛のエピソードはあったけど、相手の男性も話の展開も違うし、やっぱり小説の方も読んでみてよかった。
今まで綾さん以外とは、あまり深く関わろうとしてこなかった芭子だけど、少しずつ社会での生活に慣れ、一歩踏み出して溶け込み始めようと努力してます。
本文を少し引用するけど、
そして何より、夢とか希望といわれるものを抱くためだ。生きていてよかったと思えるようになりたい。最後の最後に、後悔したくない。ここしばらくずっと考えてきた。
だが、頭では分かっていても、何より意欲が湧かない、進むべき方向がまるで分からない。
と悩みを抱えていた芭子にすごい共感して読んでいたので、このままいい方向に物語が進んでいってほしいなあと深く思ってしまいます。
私も学生の頃から部活動選びとかで、やりたいものがなくて悩みに悩み続けて、そのまま何にもやらないとかしてきて、
それから進歩もなく大人になってしまったので、こういう悩みはグサグサくるんですよねえ。
ブログで読書感想文を書いてるのだって、自分が何を考えて何を思っているのか、何を好きなのかとかを、改めて考え直して、それを外に表現する練習でもあったりします。
次巻の『いちばん長い夜に』でこのシリーズは終わりですが、
逃れられない過去に引っ張られながらも、一足飛びではなく、少しずつ前に進もうとする2人に良いラストでありますように。
あと根津神社のつつじまつりに対して、綾さんが200円はもったいないって言ってたけど、
200円を払わず、つつじ苑を外から眺めるだけでも十分綺麗なんですよ。ただ境内には色々美味しそうなお店も出てるので、そっちの誘惑の方が課題かな。
でも普段は倹約してる芭子たちが、USJでちょっと贅沢して楽しんでたように、お祭りでお金を使うのって楽しいよね。