『高慢と偏見とゾンビ』セス・グレアム=スミス 感想
原著者:ジェイン・オースティン
著者:セス・グレアム=スミス
訳者:安原和見
高慢と偏見とゾンビ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者:ジェイン・オースティン,セス・グレアム=スミス
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2010/01/20
- メディア: ペーパーバック
内容紹介
あの名作が新しく生まれ変わった
――血しぶきたっぷりに!
ロマンス remix ホラー remixアクション
18世紀末イギリス。謎の疫病が蔓延し、死者は生ける屍となって人々を襲っていた。田舎町ロングボーンに暮らすベネット家の五人姉妹は少林拳の手ほどきを受け、りっぱな戦士となるべく日々修行に余念がない。そんなある日、近所に資産家のビングリーが越してきて、その友人ダーシーが訪問してくる。姉妹きっての優秀な戦士である次女エリザベスは、ダーシーの高慢な態度にはじめ憤慨していたものの……。
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』をベースに、ゾンビという要素を混ぜ合わせることで、まったく新しい作品に生まれ変わった、全米で誰も予想だにしない100万部の売上げを記録した大ヒット作、ついに日本上陸!
とゾンビって何だよ!
『日本以外全部沈没』*1や『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』*2にも通じる直球で雑過ぎるタイトル、結構好き。
この本のタイトルを知ったとき、すぐ読んでみたいと思ったものの、当時はまだオリジナルである『高慢と偏見』自体を読んでいなかったので、
本家より先にパロディーを読むのは違うんじゃないかと、ずっとおあずけしてたんですよね。
ただついにオリジナルの方を読みましたので、やっと本作を読むことが出来ました!
しかしオリジナルの高貴なタイトルを、一言ならぬ一単語でぶち壊し、それだけで内容も説明しきってしまい、インパクトも抜群なタイトル、凄まじいネーミングセンスだわ。
以下感想。ネタバレは控えめ。
訳者あとがきによれば、文章の8割以上は原著のままなので、『高慢と偏見』を読み返すような感覚で読めます。
あー、こんなシーンあったなーって。
登場人物の多い作品なので、初読のときは誰が誰か分からなくなったりしたのですが、今回はシャーロットが何を考えてたのかとか、ベネット家がどう見られていたのかなどが、頭の中で整理しながら理解して読めました。
ただゾンビが出てきますけどね。
あー、こんな話じゃなかったぞ!おい!って。
舞踏会でゾンビが襲ってきたりしなかったぞ。そしてリジー、頼むからダーシーの喉をかっさばこうとしないでくれ(笑)。割とみんなキャラ崩壊してます。
おんなじ話なのに違う、違うのに同じ、ついさっきまで『高慢と偏見』を読んでたのに、気付いたらゾンビ小説を読んでる、なんとも不思議体験。
何度ページをめくる手を止めて笑ったことか。
また内容紹介にも書いてる少林拳や他にニンジャとか、いったい日本や中国のことを何だと思ってるのか(笑)。ゾンビが出てくる時点でハチャメチャな話だけど、輪をかけてメチャクチャです。
あとゾンビとは関係のないところでも、しれっと改変されてたりする箇所もあるんですよ。
ゾンビ要素は突拍子もないので、グレアム=スミスによる創作だとすぐ分かるのですが、
ゾンビ関係ない改変は、うっかりしてると見逃しそうであったりなかったり。誰だよシラクって。私生児って何のことだよ。
そしてやっぱりオリジナルの『高慢と偏見』を先に読んでおいて正解でした。
ゾンビを先に読んでも面白いとは思うんですが、何がそのままで何が変わったのかを探しながら読むなら、オリジナルが先ですね。
逆にゾンビを読んでからオリジナルを読んじゃうと、物足りないというか薄味に感じちゃうと思いますコレ。そのくらいゾンビ要素が強烈。
別の言い方をすると、オリジナルを読んだ時に抱いた感想や感情が、本作を読むことですべてゾンビに上書きされます。タバスコかけまくって辛味以外の味がなくなった料理みたいになります。
なので『高慢と偏見』が大好きな方は、逆に読まない方がいいかもしれません。
オリジナルを読んだうえで、ゾンビに上書きされても構わないよって方でしたら、大変笑える小説としてオススメします。
また本作はパロディーであるにも関わらず2016年に実写映画化もされてるんですよね。
オリジナルの『高慢と偏見』も2005年に何度目かの映画化がされてるので*3、それと合わせて見てみたいな。
すでに読んでいたオリジナル『高慢と偏見』の感想はこちら(ネタバレあり)。