『高慢と偏見(下)』ジェーン・オースティン 感想
高慢と偏見(下)
著者:ジェーン・オースティン
訳者:富田彬
- 作者: ジェーンオースティン,Jane Austen,富田彬
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1994/07/01
- メディア: 文庫
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本の内容
所はハーフォードシア.ベネット家には五人の娘がいる.その近所に,独身の資産家ビングリーが引越してきた.彼は美しくすなおな長女ジェーンに惹かれ,その友人ダーシーは聡明で溌刺とした次女エリザベスを好ましく思うが…….のどかな「田舎の村の家庭生活の絵」の中に,オースティン一流の精緻な人間観察とユーモアが光る.
上巻の感想を書いてから少し空いてしまいましたが、下巻も読みましたよ。
それでは下巻の感想はこちら。ネタバレありです。
上巻の最後、ダーシーの告白とその後の手紙によって、主人公エリザベスはそれまでの彼に対する悪印象を変えざるを得なくなります。
変えるのは彼への印象だけでなく、今まで好印象を持っていたウィカムや、彼女自身の家族、そして偏見や誤解から、彼を強く罵ってしまった自分自身に対しても。
エリザベスにこっぴどく振られたあとも、どうやらダーシーはエリザベスのことを変わらず好いているようだし、
誤解の溶けた後のエリザベスの彼への好意は、その後の彼の慇懃な振舞いもあって、どんどん上昇していくので、
越えるべき障害は多々あるけど、まあ結ばれるんだろうなあと呑気に構えていたら、突然の妹リディアの駆け落ち。しかも相手がよりにもよってダーシーとの好くない因縁のある、あのウィカムと。
越えるべき障害が増えてしまった。どうやったらこの物語は納得のいくラストまで持っていってくれるの?とここで読む速度が加速させられます。
これまでベネット家の家族や親類、それらの交友関係と、たくさんの人物と人間関係を描かれてきたけど、この駆け落ちはそれら広く多くの人に影響を与えていて、
上巻を読んでる時も少し感じてたんだけど、こういう家族親類内でのゴタゴタの描かれる様が、渡る世間は鬼ばかりっぽさがあります。
この作品は恋愛要素の強い渡鬼だよね。あっちも五人姉妹だし。
なんだかんだあって、リディアとウィカムの結婚が決まり、一度リディアが家に帰って来た時、
リディアの自分の結婚は、誰からも羨ましがられ、祝福されると考えてる振舞いは、なかなかに怖い。
世の中には自分とは違う考えや価値観を持つ人がいることに、まったく思い至らない見識の浅さ、
自身の家族にも、全員からは祝われてないことに気づかない価値観の断絶っぷりが怖い。
最終的にエリザベスとダーシーは結ばれ、ハッピーエンドで終わったけど、もし第2シーズンがあったら、確実に波乱の展開が待ってるよね。
ダーシーの叔母キャサリン令夫人はエリザベスのことを嫌ってるし、姉のジェーンだって小姑とも円満でないだろうし、
リディアとウィカム夫婦なんて、絶対問題起こすだろうし。というかすでにエリザベスに手紙で援助を求めてるし。
5人姉妹のうち3人が結婚して、話題が一気に所帯じみてきて、ますます渡鬼っぽくなると思うのですよ。
あとはダーシー目線でもこの物語を見て見たいなあと。彼って一見不愛想に見えるけど、実は不器用な人だけっていう、結構可愛らしい人よね。
それ以外にも、あまり掘り下げられなかった三女メアリや、キャサリン令夫人の娘、ダ・バーグ嬢の内面も読んでみたいなあ。
メアリは家族の中で1人浮いているような印象を感じたし、ダ・バーグ嬢本人はダーシーのことをどう思ってたのかしら。