『ハルとナツ 届かなかった手紙』橋田壽賀子 感想
ハルとナツ 届かなかった手紙
著者:橋田壽賀子
内容紹介
魂を揺さぶるふたりの女性の一代記
日本とブラジルに引き裂かれて生きたふたりの姉妹の70年。その人生の歳月をスケール豊かに浮き彫りにし、「日本」と「日本人」のありかたを問う壮大な大河ロマン。橋田壽賀子のオリジナル脚本で描く、日本人の「絆」を見つめる物語。放送開始80周年を記念して放送するNHK大型ドラマの小説版。
今年4月4日に逝去された、橋田壽賀子さんの追悼特集コーナーが図書館で作られていて、そこに並んでいたのが本作。2005年に放送された同名ドラマのノベライズです。ちょうどこのドラマ、リアルタイムで見てるんですよね。結構面白かった記憶があります。
『渡る世間は鬼ばかり』のノベライズもあったのですが、こちらはずらっとたくさん並んでて、こんなに読めない!と思ったのでこちら借りました(笑)。
あらすじは昭和9年、北海道で困窮した生活をしていた髙倉家は、家族で3年の出稼ぎのつもりでブラジルへの移民を決断するも、二女のナツが出港直前に伝染性の病気であることが判明。苦渋の決断でナツを日本へ置いていくことに。
ブラジルに渡った姉ハルと日本に残された妹ナツ。お互いに手紙を出し合っていたけれど、不運にもどちらも相手に届くことはなく、70年の間、生き別れとなった姉妹の物語です。
ドラマでは姉ハルの老年期を森光子、青年期を米倉涼子が演じ、妹ナツの老年期を野際陽子、青年期を仲間由紀恵、子供時代は志田未来が演じていました。豪華なキャスト。
以下感想。多少ネタバレあり。
物語は80歳となったハルが、孫の大和と一緒に日本へ70年振りに帰国したところから始まります。
戸籍をもとにナツの住所を見つけ会いに行くも、70年も連絡の取れなかったナツからは、自分は親にも姉にも捨てられたと拒絶されてしまう。
取り付く島もなくホテルの部屋に戻ったハルは、70年前に何があったのかと大和に問われ、ハルが大和へ語る形で回想へ。
その後お互いが70年前に出し合っていた手紙が奇跡的に見つかり、改めて再開した二人は70年の溝を埋めるように語り合います。
ドラマを見てから15年以上経ってるものの、大体のストーリーは覚えてましたが、冒頭の部分を読んだだけでもグっと引き込まれて、寝ずに最後まで一気読みしてしまいました。引き込まれて一気読みしちゃう小説なんてホント久々。
ナツに会わなきゃ死ねやしないと帰国したハル、それを私は捨てられたと突き放すナツ。森光子相手にけんもほろろな態度をとる野際陽子がパッと頭の中に浮かびます。
そして当時の手紙が見つかったことがきっかけで誤解が溶け、ハルに対して自分は捨てられてなかった、愛されていたんだと語るナツ。森光子に少し甘えた調子で話しかける野際陽子が頭に浮かぶんですよ。
橋田さんだけでなく、森さんも野際さんも亡くなられてる今となっては、ドラマを見た時とはまた少し違った感慨のようなものがあります。
ブラジルでの劣悪な待遇、そして第二次世界大戦もあり日本への帰国も出来なかったハル、
意地悪な伯母や従兄弟たちの存在や、自分のことを守ってくれた祖母の急死もあって家出をしたナツ、
過酷な状況でも辛抱して生き抜く人や、家族をテーマにした物語はまさに橋田壽賀子作品。日系移民の人達が直面した過酷な境遇の描写も、きっとたくさんの資料や取材の上で描かれたのでしょうね。
『渡る世間は鬼ばかり』のテレビでのレギュラー放送が終わってからは、橋田壽賀子作品に触れる機会がなかったのですが、久々に触れることが出来ました。ありがとうございます。
橋田さんのドラマって、前回の話を見てなかったり、家事をしながらのながら見でも分かるように、台詞でなんでも説明しちゃうって言いますけど、
本作も地の文やらなんやらで少し前の展開の説明が度々あります(笑)。ちょっと懐かしくなっちゃいました。
そしてラストシーンもまた素敵なんですよ。ドラマを見てたときも、当時はまだ涙腺の固かった私もウルっときたのを覚えています。
ノベライズでも十分楽しく読ませていただきましたが、また映像で見たいなあ。NHKさん追悼番組として再放送してくれないかなあ。
あと本作はドラマだけでなく、妹ナツに焦点をあてた舞台版もあり、こちらもテレビ放送がされたことがあるのですが見損ねちゃってるんですよね。
なのでドラマ全5話と舞台版を合わせた再放送を期待しております。
現在残ってるドラマのページ。2つ目のリンクではドラマの映像も少し見れます。
放送80周年記念ドラマ ハルとナツ 届かなかった手紙 | NHK放送史(動画・記事)
同じく日系移民を題材にしてる小説。こちらは日系アメリカ人のお話。テーマが少し近いかなと思ったのでリンクを貼ります。