『ボーイミーツガールの極端なもの』山崎ナオコーラ 感想
ボーイミーツガールの極端なもの
著者:山崎ナオコーラ
内容紹介
管理栄養士を目指す大学生は野球選手との結婚に憧れ、
子育てを終えた中年の女性がファッションデザイナーと巡り合う。
引きこもりニートは松田聖子に恋慕し、
その弟は誰に対しても自分から「さようなら」を切り出せず、
兄弟の父親は妻と再会する。
人と接するのが苦手な少女は思いがけず人気アイドルになって、
アイドルの付き人は嫉妬に苦しみ、
三流俳優は枕を濡らす。
植物屋の店主は今日も時間を忘れてサボテン愛に耽る。年齢も性別も境遇も異なる男女が出会い、恋をし、時には別れを経験する。
「絶対的な恋なんてない」
不格好でも歪でもいい、人それぞれの恋愛の方法を肯定する連作小説集。人気多肉植物店・叢Qusamuraの店主・小田康平が植物監修を務める。
この本を読むきっかけは、本著の植物監修を務める、叢Qusamuraの店主・小田康平さんの展示会を去年見たことです。
展示されていたサボテンや小田さんの美学に強く衝撃を受けて、忘れられないでいたのですが、最近調べてたら本著では表紙のサボテンなど色々手掛けているとのことで読んでみることにしました。
以下感想、ネタバレというほどのことは書いていません。
私自身は恋をしたことはなく恋愛小説などは、どこかファンタジーのような感覚で読んでいるのですが、
最初に収録されている『処女のおばあさん』は恋をしたことがない72歳の女性、鳥子が主人公だったので、作品の世界に入り込みやすかったです。
文章もとても読みやすく、全体的に落雁のような優しい甘さを感じる作品群で、ちょっぴりビターな話もあるけど心をえぐりにかかるような程でもないので、気軽に楽しく読める短編集でした。
私の好みは、第七話『付き添いがいないとテレビに出られないアイドル』とそれに続く2編です。
人見知りで会話も苦手な女の子の美代梨が、黒子の恰好をした従姉のアカネの付き添いのもと、ネット動画でアイドルデビューして、人気が出てそのままテレビにも出るようになって……という話なんですが、
あらすじからして色々と変で可笑しいし、アカネがいないとまともに喋ることもできない美代梨や、そんな美代梨を黒子に扮して支えるアカネなど、登場人物がどこか歪で不器用で不格好で愛らしくて、まるで作中に出てくるサボテンのよう(笑)。
そう、作中でかなり唐突な位の勢いで、サボテンがキーアイテムとして出てくるんですよ、この小説。
唐突に出てくるサボテンや、サボテンの写真と解説も、いいアクセントになってると思います。
小田康平さんのサボテンの写真集。展示会でも売ってて買おうかと悩んだけど買わなかった本。やっぱり買おうかな。
追記。
読むきっかけとなったイベントの写真を記事にしました。