『みさと町立図書館分館』髙森美由紀 感想
みさと町立図書館分館
著者:髙森美由紀
概要
正直、ままならないことだらけの図書館業務。
でも、まあまあ楽しい毎日です。みさと町立図書館分館に勤める遥は、33歳独身の実家暮らし。
本の貸借トラブル&クレーム対処をはじめ、
家庭内の愚痴聞きや遺失物捜索など色々ある図書館業務は、ままならないことが多い。でも小さな町の図書館分館では、訪れる人たちの生活が感じられる。理解もできる。
だから、ここではちょっと優しくなれるのだ。いなかの図書館を舞台に描かれる、
小さな町のハートフル・ストーリー。[装画] loundraw
図書館で借りた、中身は秘密のお楽しみ袋に入ってた3冊の1冊目です。
いつも本を借りる時は、事前にあらすじをネットで調べてから借りるのですが、今回はあらすじも何も調べずに読んでみました。
以下感想。ネタバレありです。
主人公の山本遥は33歳の独身、東北の田舎にある実家で父と二人暮らし。実家から自転車で通える距離にある、町立図書館の分館で時給700円の契約職員として働いてます。
そんな遥の職場の同僚や利用者や、父やご近所さん達との日常を描いた作品です。
表紙の印象から、ほんわか優しい話かなと思いながら読み始めたんですが、以外と重みがある。
最初の話をざっくり要約しちゃうと、近所に住むキツイ性格のお婆さんがいて、遥もあんまり関わりたくない相手なんですが、脳梗塞で倒れて特養老人施設に入ったのち亡くなります。
そして亡くなった後にお婆さんが、遥にお礼を言っていたことを知らされるんですよ。
そのお礼は父の採った山菜を持って行ったことに対してなのか、自分の相手をしてくれたことに対してなのか、当人が亡くなった今となっては分からずじまい。
息子夫婦とも折り合いが悪く、望んでいた同居も出来ず広い家での1人暮らし。昔は教師をしてたのに弔問客の少ない葬式。遥にとってあんまりいい印象のお婆さんじゃなかったけど、寂しさを感じさせる晩年と、亡くなってから知る感謝の言葉。
そんな日常の中にある寂しさや辛さと、それと一緒にある嬉しさや新しい気付きが描かれてる作品でした。
特に頻繁に描かれる3年前に亡くなった母との思い出は、幸せな記憶であると同時に、もっとこうすれば良かったといった後悔を思い浮かばせます。
そういう誰かとの死別というのも、本作のテーマの1つなのかなって思います。
あと同僚の1人である岡部さんっていう、20代後半くらいに見える男性がなかなかいいキャラしてるんです。
ちょっと図々しくも憎めなくて、大の甘党で甘いものばかり食べつつも、遥の持参した父の手作り弁当も隙を見てつまみ食いするんですよ。
この作品の和みポイントですね彼は。可愛い。
1話1話はちゃんと終わってるんですが、1冊の本としてみると、これからも遥の実家暮らし図書館勤務の生活は大きく変わらず続いていきそうな感じで、2巻3巻あっても違和感のない終わり方なんですがどうなんでしょうね。
ここで終わりなら終わりで、もうちょっとハッキリとした区切りのある終わりの方が、私は好きかな。
図書館のお楽しみ袋シリーズ。