『知らない映画のサントラを聴く』竹宮ゆゆこ 感想
著者:竹宮ゆゆこ
この本を読むきっかけは、以前感想を書いた『この部屋で君と』の巻末にあった新潮文庫の最新刊とかにのってたからです。よく分からないタイトルに惹かれました。
竹宮ゆゆこさんの著作は直接読んだことはありませんが、竹宮さん原作のTVアニメ『ゴールデンタイム』は見たことあるんですよね。
話が進んでいくごとに登場人物それぞれの抱える問題が分かってきてすごく面白かったです。きっと竹宮さんの本は私に合ってるだろうなというか、いつか読んでみたいとは思っていました。
以下感想、ネタバレありです。
本の内容
これは恋か、贖罪か。圧倒的恋愛小説。
錦戸枇杷。23歳。無職。夜な夜な便所サンダルをひっかけて“泥棒”を捜す日々。奪われたのは、親友からの贈り物。あまりにも綺麗で、完璧で、姫君のような親友、清瀬朝野。泥棒を追ううち、枇杷は朝野の元カレに出会い、気づけばコスプレ趣味のそいつと同棲していた……! 朝野を中心に揺れる、私とお前。これは恋か、あるいは贖罪か。無職女×コスプレ男子の圧倒的恋愛小説。
上記の本の内容は、裏表紙や出版社のHPに書かれてる文章をそのまま引用してるんですが、これ自体が結構ネタバレになってます。
これだけで本のあらすじ半分くらい説明しちゃってます。
冒頭から謎の対決に始まり、次は金品を狙わず財布の中の写真を奪っていく、セーラー服女装男のひったくり犯と訳の分からん始まりですが、
このひったくり犯、裏表紙の文を読んでればほぼ分かるように、主人公枇杷の親友である朝野の元カレ、森田昴です。
実家を追い出された枇杷は色々あって森田の部屋に居候することになりますが、2人を結び付けた朝野は1年前に亡くなっており、それぞれ親友/元カノを亡くした、救えなかった、追い詰めてしまったのではないかという苦しみや罪悪感を未だに抱えていて、
この話はきっと2人が少しずつ立ち直り、胸に痛みを抱えながらも前を向いて歩きだすちょっとビターな話なんだろうなって思ったら、
森田が話した朝野との出会いのエピソードがあまりにも突飛すぎる内容で、この物語はどこに向かってんだ!?と変な展開に。
そもそも物語の始めから、セーラー服着てひったくりしてる時点でおかしな話ではあったな。
親友/元カノの死というちょっと重たい題材を扱いつつ、夏の爽やかさや小気味良い会話のテンポ、ラノベ的なコミカル要素も交えてシリアスになり過ぎなくまとまってます。
ニート状態で実家暮らしの枇杷の吐き出しようのない気持ちの描写や、小学生時代に枇杷と朝野が親しくなるきっかけとなったプールの出来事も可愛くて良かった。