『虚人たち』筒井康隆 感想
著者:筒井康隆
内容紹介
同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはるかに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識しつつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。
高校生の頃に途中まで読んでいたので、改めて読んでみました。
別記事で書きましたが、昔『お厚いのがお好き?』という番組で紹介されていて、興味をもった作品です。
本作は実験的な小説で、たとえば普通の小説でしたらページをめくると1日経過していたり、1年、100年とあっという間に過ぎることなんてよくありますけど、
本作では時間の経過が変わらず一定です。アメリカのTVドラマ『24』みたいな感じです。
以下感想。ストーリーのネタバレはありません。
実験的なところは他にも色々ありますが、
ともかく冗長。本筋に関係あるなしに関わらず、主人公が目にしたもの、考えてることが何でもかんでも描写される。
そして改行は科白が入る時ぐらいしか使わず、読点はまるで使わないので、ページを開いたら文字がギッシリ。
読みにくい上に、読んでも特に重要ではない描写ばかりなので、読んでいて苦痛。
嫌いな食べ物を食べる時に、あまり噛まず飲み込んじゃうことってありますが、そんな感じで深く読まず、のどの奥に流し込むように読みました。
あと全体的に、ジェンダーというか性的なものの見方でしょうか。直接的な性行為だけではなく、日常に広く存在する性にまつわる描き方が、ともかく私と馬が合わない。
良し悪しの問題というより好みの問題として。
試み自体は実験的で面白いです。
ミステリー小説やドラマを見てると、本筋と関係なさそうな描写が入った時、あっこれは伏線だなって、少し気持ちが醒めてしまうことがあるんですが、
逆に本筋と関係なさそうな描写をたくさんしたら、こんなことになるんだなって分かりました。
ただ内容はつまらなかったです。