『カニバリストの告白』デヴィッド・マドセン 感想
カニバリストの告白
著者:デヴィッド・マドセン
訳者:池田真紀子
内容紹介
凡人よ、本書を読まずして美食を語るなかれ。
殺人容疑で逮捕された天才シェフが挑んだ、食欲、性欲、支配欲、あらゆる欲望の泥濘を突き抜ける至高の一皿とは? 昨今のミシュラン騒動を予見し皮肉るかのような、人間最大のタブーに挑む怪作にして清々しい快作。
以下感想、ネタバレも少々。
読み終わって感想を一言で言うなら、私は何を読んだ(読まされた)んだろう。
この本に興味を持つきっかけは、出版されて間もない頃に新聞の書評欄で紹介されていて、確か変態小説云々と書かれてたんですよ。
それで当時図書館で借りたのですが、読書する集中力が出ず最初の方をちょっと読んだだけで返してしまったんです。
だけどこの作品のことが頭の隅っこにずっと残ったままで、ついに今回読み直したという次第です。
物語は主人公で芸術家肌の料理人オーランドーが、料理評論家であるトログヴィルの殺人容疑で逮捕されているところから始まりますが、
オーランドーは催眠薬でトログヴィルを眠らせ、全裸にして肛門にズッキーニを挿したことは認めるのですが、殺人は否認します。
ズッキーニを挿してる時点でオーランドーが大層な変人なんですが、これまだ1ページ目なんですよね。
1ページ目からぶっ飛ばしてる話なんです。こんな話だったこともあり冒頭で読むのを止めてしまった私は、10年以上アレは何の話だったんだろうという思いが頭の隅っこに残り続けていたのでした。
この物語はそんなオーランドーが自身の半生を書いた手記であり、 料理への情熱と情事が芸術的に描かれています。
作中で数えきれないほどある性描写に関しては、読み手の情欲を掻き立てるというより、嫌悪を誘ったり滑稽に見える描き方が多いかも。ウィリー・ウォンキーちゃん(隠語)などは笑った。
合間合間に入る刑務所の担当医の報告書でも、担当医がオーランドーのことを極めて嫌悪してることが分かります。
ただ何に対して情欲を抱くかは人それぞれですし、オーランドーなどはまさにそうであって。
で、この作品は変態小説であると同時に料理小説なので、情事や殺人の合間に料理のレシピなどもよく挟まるのですが、私は料理にはてんで疎いので料理要素は結構読み飛ばしちゃったんですよね。
なので料理に関心のある人、造詣の深い人が読めば、私では汲み取れなかった意図やニュアンスが分かるかも知れません。変態で料理好きの方には特にオススメの作品です。
私は割合楽しく読ませたもらったし、物語の締め方は結構好きですコレ。良い終わり方をしてると思います。
強いて言うならオーランドーの右腕であるジャックの“クライアント”との“セッション”をもう少し詳しく……。
だって他の登場人物が太ったおじさんやおばあちゃんとかばかりなんだもの。