この部屋で君と
著者:朝井リョウ/飛鳥井千砂/越谷オサム/坂木司/徳永圭/似鳥鶏/三上延/吉川トリコ
同じ鍵を持つ、ふたり。だけど心は――。
誰かと一緒に暮らすのはきっとすごく楽しくて、すごく面倒だ。「いつかあの人と同じ家に住めたらいいのに」「いずれこの二人暮らしは終わってしまうんだろうか」それぞれに想いを抱えた腐れ縁の恋人たち、趣味の似た女の子同士、傷心の青年と少女、出張先の先輩と後輩、住みついた妖怪と僕……気鋭の作家8名がさまざまなシチュエーションを詰め込んだひとつ屋根の下アンソロジー。
誰かとの2人暮らしをテーマにした短編のアンソロジー。
それぞれの話に繋がりはなく、8人の著者によるバラエティーに富んだアンソロジーです。私は遅読なので色んな作家さんの作品を読みたいと思ったら、こういう本は良いのかもしれないなあと手に取りました。
収録作品は、朝井リョウ『それでは二人組を作ってください』、飛鳥井千砂『隣の空も青い』、越谷オサム『ジャンピングニー』、坂木司『女子的生活』、徳永圭『鳥かごの中身』、似鳥鶏『十八階のよく飛ぶ神様』、三上延『月の砂漠を』、吉川トリコ『冷やし中華にマヨネーズ』の8作品。
以下感想、気に入った2〜3作をあまりネタバレにならない程度に。
『それでは二人組を作ってください』朝井リョウ
大学生の主人公、理香は社会人の姉とルームシェアをしていたが、姉が出ていくことになり新しくシェアメイトを見つけないといけない状況から始まる物語。
理香は人見知りというほどではないんだけど、相手との距離感を縮めたり、自分の考えを上手く伝えるのがちょっと苦手なところがあって、タイトルにあるような「それでは二人組を作ってください」って言われると余っちゃうタイプの子。
人付き合いの苦手な人の心理がよく描かれていて、
友達と一緒にいるときにどこか楽しいように装ってしまっていたり、自然とちょっと無理をしてるようなところに何だかすごく共感してしまいました。
友達と仲良く盛り上がることに少し憧れてしまう、けれどいざ一緒にいるとストレスを感じる、あー分かってしまう。
これは短編と言わず長編で読みたい作品でした。
あと作中で理香の大学の女友達が、カフェでタピオカミルクティーを飲んでる描写があって、
この本が出版された頃ってまだタピオカブームとか言われる前だよなーって思い、著者は流行を早い段階でキャッチしてたんだと感心してしまいました。
『月の砂漠を』三上延
舞台は昭和初期、新婚女性の八重が当時としてはモダンな新築の鉄筋コンクリートの3階建てアパートという新居にて、妹や夫への想いを語るちょっとしっとりめの話。
自分とは性格などは少し違っていたが、仲の良かった4つ下の妹の愛子。何を考えているのか分からないところもある寡黙な夫。
この作品は本文は30ページに満たないくらい短いですし、あんまり詳しく内容を書くと野暮な気がするので是非読んで判断して欲しいな思います。
短くもよくまとまってて好きな作品です。
『女子的正解』坂木司……の感想は改めて
本作は2018年にNHKでドラマ化もされたのでご存知の方も多いかもしれません。
私がこのアンソロジーを知るきっかけのなったのも、そのドラマを見てたからです。
本作はこの本に収録されてる短編とその後の話を合わせて、単独で単行本として出版されています。このアンソロジーを読んだ後にそっちも読んだので、『女子的生活』の感想は改めて別記事で書かせていただきます。
でもあえて言うならこの本に収録されてる短編1話だけでもすごく面白いです。
別記事で書きました。
あとはアンソロジー全体として気になったのが、8作品のうち2作品は成人男性と血縁のない幼い少女という組み合わせなんですよね。
別に文句があるというわけではないんですが、話の内容的に2作品とも「少女」を「少年」に置き換えても問題はなさそうな内容だったし、少しひっかかりを感じてしまう。
世間的には成人男性と少女の組み合わせがウケやすいのかなあ。