週末花探し

東京を中心に花を見に出かけた記録。金~日曜日のいずれかの夜に週一更新。たまに読書感想文。

『展覧会いまだ準備中』山本幸久 感想

展覧会いまだ準備中

著者:山本幸久

展覧会いまだ準備中

展覧会いまだ準備中

  • 作者:山本 幸久
  • 発売日: 2012/12/18
  • メディア: 単行本
 

本の内容

大学時代は応援団に所属し、今は新米学芸員の今田弾吉、28歳。個性的な先輩たちから振られる雑用をこなすことに精一杯の毎日で、いまだ自ら企画した美術展を実現させていない。だが、美術品専門運送会社の美人社員・サクラの存在と応援団OBから鑑定を依頼された一枚の絵が、彼の心に火を付ける――。

このブログは本の感想を書くより、公園などで撮った花写真を紹介するのが主なコンテンツなのですが、

最近は八王子市内の公園によく足を運んでいることもあり、八王子を舞台にした本を読んでみようと探してみて手に取った作品です。

 

以下感想。少しネタバレあり。

 

まず舞台が八王子かどうかなんですが、物語の中心となる舞台は主人公の今田弾吉の務める野猿美術館。

野猿美術館の所在地はハッキリとは書かれませんが、

  • 八王子の市街からどんだけ道が混んでいても30分はかからない。
  • 最寄り駅は京王線聖蹟桜ヶ丘駅から乗って急行が止まらない駅。弾吉が聖蹟桜ヶ丘で誤って急行に乗り、慌てて高幡不動で降りたので、高幡不動と次に急行の止まる北野の間、南平平山城址公園長沼どれかが最寄り駅ではないかと思います。

付近には野猿街道野猿峠と呼ばれる場所もありますね。

 

で感想ですが、主人公の弾吉は大学院を卒業して野猿美術館で学芸員として働いてます。

職員としては若手というか新米ということもあり、自分から率先して何かするというより、他の人のサポートや雑務に使いっぱしりのような仕事が多いです。

 

弾吉の先輩学芸員たちはみんな、仕事や美術品に対する強い熱意を持っているし、

運送会社で働く19歳のサクラや、大学のOBの息子である中学生のマサヒコといった、自分より若い人達にもフレッシュな情熱を見せつけられたりして、

そんな中でちょっと周りに流されやすい弾吉自身が、自分か何をしたいか何をすべきか悩む姿はちょっと共感してしまいますね。

 

序盤から美術館で働く人達や運送会社の人、弾吉の大学時代の先輩など多くの登場人物が出てきますが、意外と混乱せず読めます。

登場人物の多い作品は読むのに四苦八苦することも多いのですが、本作はそのあたりすんなり読めました。

 

また作中では殺人事件だの美術品窃盗事件といった大きな事件が起こることはなく、学芸員として働く弾吉の日常が淡々と描かれます。

象徴的イベントや特定のシーンが印象に残るというよりは、全体的な雰囲気というか空気感、人物同士のやりとりを楽しむ作品ですね。

最後もふわっとした終わり方なので、ハッキリキッパリしたものがお好みの人には向かないかもしれません。私は気負わずのんびりした心持ちで読めて結構好きですね。

 

私は図書館で借りた単行本で読みましたが、文庫版だか電子版だかの方では書き下ろし短篇も収録してるそうなので、今から読むならそっちの方がお得かも。

 

また私は山本幸久氏の作品を読むのは初めてなのですが、本作の登場人物は他の作品にも出ているそうです。

本作以前のものだと『凸凹デイズ』、以降のものだと『芸者でGO!』『あたしの拳が吼えるんだ』など。特に『あたしの拳が吼えるんだ』にはその後の弾吉も出てくるそうな。

ちょっと調べただけなので他にもあるかも知れません。