『記憶の書』ジェフリー・フォード 感想
記憶の書
著者:ジェフリー・フォード
- 作者: ジェフリー・フォード,貞奴,金原瑞人,谷垣暁美
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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前作『白い果実』に続く、ジェフリー・フォードの3部作の2作目。本記事は前作のネタバレをしてますので、ご注意ください。
前作の感想はコチラ。
内容紹介
『白い果実』の続編。《理想形態都市》崩壊の八年後、コミュニティーには奇妙な《眠り病》が蔓延した。特効薬を探しに、クレイはビロウの《記憶の宮殿》に潜入する。壮大な幻想3部作、第2弾。
前作の続編、クレイが主人公
前作『白い果実』はあそこで終わっても良さそうな終わり具合でしたが、本作はそのままその後の話です。前作では人間のクズみたいだったクレイも、本作では一緒に暮らす村人たちとの関係も良好な善人に。
そこにまたビロウが現れるという。なぜ前作の終わりに息の根を止めなかったんだと思ってしまいました(笑)。そして村人たちの為に、クレイが立ち上がるという前作では考えられなかった展開。クレイも変わったなあ。
訳者変更、読みやすくなったが平凡な印象
読む前に一番不安だったのが、訳者の変更。
山尾悠子さんが抜けて、新たに詩人の貞奴さんが加わりました。そのせいなのか本作は、前作と比べると癖が薄くなり、読みやすくなった気がします。ただその癖こそが、作品に神秘的なヴェールを被せていたなとも思います。
ただ癖の薄さは、主人公クレイの性格が前はろくでもない奴だったのが、本作では真人間というか、真っ当な主人公になったのも影響もあるのでしょう。
それでもビロウの記憶の中という新たな舞台や、ギャップの激しいミスリックス、瞬間を研究するアノタインなど、新しいキャラクターたちは変わらず魅力的です。
以下ややネタバレなので反転
切ない終わり、続きが、そしてどこまで語られるのか気になる
前作がビロウを倒し、平和な生活を手に入れるハッピーエンドなのに対し、本作は切ない印象。
バタルド町長夫婦の再会は特に切ない。
記憶の中のアノタインとは、もう会えないのだろうか。
スカーフィナティとは結局何者なのだろうか。
スカーフィナティが語った、ビロウとアノタインの子供の存在。
たびたび語られる、亡くなったビロウの妹。
彼の地とはどんな場所なのか。
前作では名前がちょっと出る程度のスカーフィナティが、本作では重要な役回りだったので、最終作たる次作では、今まで散りばめられた謎がどこまで語られるのかが気になります。