『ペンギン鉄道 なくしもの係 リターンズ』名取佐和子 感想
ペンギン鉄道 なくしもの係 リターンズ
著者:名取佐和子
本の内容
なくしもの係の守保は電車の忘れ物を保管しながら、ペンギンのお世話もしている。ある日ペンギンが行方不明になり戸惑う守保の元に、忘れ物を捜す人が次々と現れて……。ペンギンの行方は?そしてなくしもの係を訪れた人が本当に探し出したかったものは? あなたの心に眠る優しい気持ちに出会える、エキナカ書店大賞受賞作、待望の第二弾!
『ペンギン鉄道 なくしもの係』の続編です。前作と変わらず、電車や駅での忘れ物を保管する、通称なくしもの係。そこには髪を赤く染め一見して駅員らしくない男・守保と、好き勝手に電車に乗ってあちこちで目撃されるペンギンがいた。そんな一風変わったなくしもの係に訪れる人達のお話です。
登場キャラは守保やペンギンなど一部は続投していますが、物語の中心となる、なくしもの係を訪れる人達は違うので、前作を読んでいなくても十分楽しめます。
ただ前作のネタバレになる要素もあるので、読むなら前作を読んでからの方がオススメです。
以下感想。ネタバレは控えめに。
その前に前作の感想はこちら。
お話は全四章収録されていて、順番に「きらきらデイジー」「僕の卒業遠足」「UFOと幽霊」「ワンダーマジック」です。
物語はそれぞれ独立していますが、すべて2月15日になくしもの係に訪れた人が主人公で、緩やかに繋がってもいます。2月15日とは偶然にも読んでるときだわ。
第一章「きらきらデイジー」の主人公は、母親に提出を頼まれた離婚届をなくした女子高生。娘に離婚届を出させる母親はなかなかクレイジーですが、そんな母親のもとで育った彼女はたくましさを感じます。
第二章「僕の卒業遠足」は小学校の卒業遠足をばっくれた男の子が主人公。学校に居場所が作れず、不器用さのある男の子には、私としては一番共感しやすいですね。
第三章「UFOと幽霊」は患者のなくしものを探しに来た女性医師が主人公。彼女の患者を助けたいという思いの背景には……。
そしてこの3つ話には、ペンギンを追いかける謎のモヒカン男も現れます。物語の本筋にはそこまで深く関わりませんが、第四章「ワンダーマジック」では彼が主人公です。
第四章では彼の正体が明かされていきますが、これまでに描かれてきた彼の行動、これまでの話に共通したテーマも合わせれば、早い段階で何んとなーく彼の正体は分かるんじゃないかなって思います。
そして第四章はモヒカン男の目線から2月15日の出来事が描かれることで、これまでの話の裏ストーリーという側面、すべての話を繋げまとめる役割も持っています。
なので本作を読むなら、四章まで全部読んでほしいですね。
そして前作もそうなんですが、本作も悩みなどを抱える人が前向きになるお話なので、人によってはその「前向きになる」ところより「悩み」の部分に気持ちに引っ張られてしまうかもしれません。
ただ前作もそうなんですが、第四章の最後まで読んだら、爽やかな読後感を私は楽しめました。
尚、個人的に一番面白かった文章は、
――ペンギンが水族館にペンギンを見に来てる!
です。