週末花探し

東京都を中心に花を見に出かけた記録。土曜日か日曜日の夜に週一更新。たまに読書感想文。

『ハルカ・エイティ』姫野カオルコ 感想

ハルカ・エイティ

著者:姫野カオルコ

ハルカ・エイティ

ハルカ・エイティ

 

内容紹介
実在の伯母をモデルに、著者が新境地に挑んだ力作
大正9年、関西生まれの持丸遙は淡い恋も経験しつつ女学校を卒業。見合い結婚という平凡な人生だったが、戦争が運命を狂わせていく

 伯母の半生をもとにした小説というのに惹かれて、だいぶ昔に手にとったことがあったのですが、その時は序盤で読むのをやめてしまったので、改めて読みました。

 

以下、感想。ネタバレは控えめ。

 ごく普通の女性の話

主人公ハルカは1920年(大正9年)に一般的な家庭に生まれたごく普通の女性。特別な家庭に生まれたわけでも、歴史に残るような偉業を成し遂げたわけでもない、普通の日本人女性。

そんな彼女が戦前から戦後、そして現代へとどんな生き方をしたかを描かれています。女学生時代の仲の良い友達の話、見合い結婚した夫の話、姑や舅との話と。

 

作中では映画や人気役者、政治家のことなど、当時の文化や歴史や風俗も交えて描かれていて、

その中にハルカが、かかとにマダムジュジュなるものを塗るシーンがあるのですが、文脈から保湿クリームかなと思いネット検索してみたら、まだ売ってる商品で驚きました(1950年発売)。

 

また比較として現代を200X年と表現したり、根本はるみの名前がちらっと出てくるあたりに、2018年に読む人間としては、逆に時代を感じます。

 

関西弁が心地よい

舞台はほぼ関西なので、大半の登場人物が関西弁で喋ります。その会話のリズムが心地よく、どんな声で、どんな調子で喋っているのだろうかと想像が膨らみます。

特に、平民には気が遠くなるほど遅く喋る日向子や、どんがらがっちゃどーんの恵美子などは楽しい。思わず音読してしまうぐらい。

 

 どこまでが事実で、どこからが創作なのだろうか

著者の姫野さんとモデルの伯母は仲が良いようだし、たくさんの話、取材をして本作を書き上げたのだろうけど、小説という形でまとめるには、それだけでは足りない部分もあっただろうし、どこから創作になるんだろうか。

それと伯母であるハルカの視点で描かれる作中には、著者本人や、ハルカの妹で著者の母、時子も出てきます。 客観的に、伯母の視点でこれらの人物を描くのは、なかなか大変だったのではないだろうか。

特にどんな気持ちで伯母目線の母を描いたのだろうか。

そういった執筆の裏側も気になりながら読みました。もうちょっと、あとがきが長かったら嬉しかったなあ。

 

 近所のスーパーで普通に売ってたので買ってみました。昭和の香り!嫌いじゃない。