『緑のヴェール』ジェフリー・フォード 感想
緑のヴェール
著者:ジェフリー・フォード
- 作者: ジェフリー・フォード,貞奴,金原瑞人,谷垣暁美
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2008/06/01
- メディア: 単行本
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内容紹介
楽園と贖罪を求めたクレイの螺旋状の旅はついに終焉を迎える。モダン・ゴシックの傑作《白い果実・三部作》最終篇。
読むのに間を開けてしまいましたが、 『白い果実』『記憶の書』に続く3部作のついに最終巻です。
以下感想。ネタバレしてます。
犬のウッドを連れ、彼の地を目指すクレイと、廃墟となった理想形態市に戻るミスリックス。
別れてからしばらく経ち、ミスリックスは美薬の力を使いながら、夢の中でクレイの旅を追う。
私も本を読むときは、喫茶店とかファミレスでコーヒーや紅茶の力を使ったりしてるのでちょっと共感(笑)。
本作でもクレイが引き続き主人公ですが、記憶の書で登場した魔物ミスリックスが語り部の役回りをしていて、ダブル主人公のような構成で、2人の物語が並行して語られます。
彼の地を目指すクレイの旅は、摩訶不思議で先の読めない展開の連続。
命の危険と隣り合わせの旅は、ウッドもいるから孤独ではないけれど、孤高な旅となっていく。
一方ミスリックスは、クレイ達の造ったウィナウの村から来た少女、エミリアとの出会いをきっかけに、村人たち俗世間との交流を始め、より人間になっていく。
対照的な2人の物語。
ミスリックスがウィナウの人たちと仲良くなろうと頑張る様はとても可愛らしかったです。
4分の3くらい読んだあたりで、でクレイが死んでしまった時は驚きました。ヴァスタシャ良いやつだと信じてたのに!
ここまでチマチマ読んでたけど、そこからラストまでは一気読み。ファンタジー小説だし、生き返るよな?なんて思いながら。
クレイは長い旅の末、贖罪の機会を捨ててまで大切な家族、妻や子供を手に入れる。
これまでの奇想天外で、著者の想像力に敬服してしまう長い旅を思うと、最後にクレイが手に入れた幸せは、とてもありふれた凡庸なものでした。
ミスリックスの願いも、人として扱われるという、ささやかなもの。魔物である彼ならば、もっと大きなことも成し遂げることが出来たはず。
ただ謎のまま明かされなかったことがめちゃくちゃ多い。
でもまあ、この世のことで、知れたり理解できることなんて、ほんの一部に過ぎないものだもんね。その辺はあんまり不満はないかな。
大きな世界観を描きつつも、最後に印象に残るのは、そんな世界の手のひらの上で転がされる、小さな男の物語でした。
最後に10代の頃の私、20代の内にちゃんと3部作読み切ったぞ!
そして来たる30代の私、記憶の書から緑のヴェールまで間を開けちゃったこともあるし、改めて通して読んでくれ!