『見知らぬ場所』ジュンパ・ラヒリ 感想
見知らぬ場所
著者:ジュンパ・ラヒリ
訳者:小川高義
- 作者: ジュンパラヒリ,Jhumpa Lahiri,小川高義
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: 単行本
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内容紹介
妻を亡くしたあと、旅先から葉書をよこすようになった父。仄見える恋人の姿。ひとつの家族だった父と娘がそれぞれの人生を歩む切なさを描く表題作。子ども時代から行き来のあった男女の、遠のいては近づいてゆく三十年を三つの連作に巧みに切り取った「ヘーマとカウシク」。ニューヨーカー等に書きつがれた待望の最新短篇集。
ラヒリ氏の作品は結構前に『停電の夜に』『その名にちなんで』の2作を読んだことがあり、どちらも大変面白かったので、本作も手に取りました。
8つの短編からなりますが、後半の3編は話が繋がっているので、実質5つの短編と1つの中編小説とも言えます。
以下感想、ネタバレと言うほどのことは書いていません。
先の2作を読んでいても思ったことですが、
私は日本人の両親の下、日本で生まれ育ち、見た目も日本人だし、日本語が母国語で、民族的というか国民的なアイデンティティというんでしょうか、それが日本1つだけで単一的というか揺らぎがあまりないのですが、
インド人の両親の下、アメリカで育ったラヒリ氏の作品からは、どちらでもあり、どちらでもないような、私にはないアイデンティティ揺らぎや混ざり方、
インド的な価値観とアメリカ的な価値観を知ってるからこその表現の幅の広さがあって、心惹かれます。
それでいて描かれる人達の生活は、遠い世界の話じゃなくて、普遍的で身近な感じがして、
例えば表題作『見知らぬ場所』は、妻と死別してから新たに旅行という趣味を見つけた父と、結婚して子供も産み、自分の家庭を築いた娘の話なんですが、父娘に微妙な距離感があるんですよね。
仲が悪いわけではないけど、母と娘とは違う、どこか気を使ってしまう感じが、日本でもこういう家族はたくさんいるだろうなあと感じます。
ちなみに本作に収録された話の中で、私が1番好きなのは『よいところだけ』です。
姉弟の話なんですが、この話は感想を書くとネタバレを避けるのが難しく、読み終えると『よいところだけ』(原題:Only Goodness)がそういう意味かって分かるとだけ伝えておきます。
- 作者: ジュンパラヒリ,Jhumpa Lahiri,小川高義
- 出版社/メーカー: 新潮社
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