週末花探し

東京都を中心に花を見に出かけた記録。土曜日か日曜日の夜に週一更新。たまに読書感想文。

『陰獣』江戸川乱歩 感想

陰獣

著者:江戸川乱歩

 

 江戸川乱歩については、今さら説明する必要もないですかね、私はよく知らないんですけれども。本作が初めて読む作品です。乱歩デビューです。

 きっかけは今年1月に本作の舞台を観たので、原作も読んでみようかと思ったんですよ。

舞台では『陰獣』と、同じく江戸川乱歩作の『化人幻戯』の2作品を混ぜ合わせるというか掛け合わせた独特な脚本だったので、機会があれば『化人幻戯』の方も読んでみたいですね。

 

 あらすじを書くと、

主人公の探偵小説家寒川は、博物館で丸髷を結い瓜実顔の女性、小山田静子と出会う。

話すと静子は寒川の作品の愛読者であることが分かり、2人は親しくなる。そして静子から昔の恋人、平田一郎に手紙で脅迫されていると相談を受けることに。

さらにその平田一郎は、主人公と同じ探偵小説家の大江春泥であると。

 

 以下感想。ネタバレはあらすじに触れる程度です。

 

 昔の日本文学ってあんまり読んだことがないんですよね、どうせ難しい日本語で書いてあるんでしょって印象もあって。本作も1928年に発表された中編小説で、90年近く前だし。

でも読んでみたら、そんなこと全然ないですね。今の日本語とほとんど変わらない印象です。食わず嫌いはダメですね。

舞台を観てストーリーをある程度知っているのもありますが、すごい読みやすかったです。

 

 ミステリー要素としては、平田は静子へ宛てた手紙の中で、静子と別れた後、探偵小説家の春泥になったと書いているが、果たして本当なのか、騙っているだけの可能性は。

また春泥は人嫌いで知られ、1年ほど前から消息不明。一体春泥はどういった人物で今はどこにいるのか。

そして後に起こる事件のトリックとは。

 

 また主人公の心理描写がよく描かれていて、春泥へのライバル意識や、脅迫に怯える静子に対しては心配しつつも、彼女から頼られることに内心喜んでるところもあったり、

単純に静子を助けたいという気持ちだけではなく、彼女に頼りがいのあるところを見せたい、春泥に吠え面をかかせてやりたいといった欲が見えたり。

 

 春泥はどこにいるか、事件のトリックは?そして主人公の心理描写で、最後までググッと読まされました。

 隙もなければ無駄もない、そんな印象です。

f:id:Nakano_Hitsuji:20190118165427j:plain

 サムネイル用に、舞台のポスター写真。

古風な日本人らしい印象を強く感じさせる静子ですが、サヘル・ローズさんの丁寧な言葉遣いがよく合う、見事な配役でした。